埼玉大学幾何セミナー
Calabi の端的 K\”ahler 計量 対 満渕の K\”ahler-Einstein 計量
会場
埼玉大学 理学部1号館3階 基礎数理演習室 ( このページ の14番の建物)
16:20--17:20
講演者
齋藤 俊輔(理研AIP・京都大学)
タイトル
Calabi の端的 K\”ahler 計量 対 満渕の K\”ahler-Einstein 計量
アブストラクト
本講演の内容は新田泰文氏 (東京理科大学), 四ッ谷直仁氏 (香川大学) との共同研究に基づく. 与えられた K\”ahler 多様体に良い性質の曲率を持つ計量を与えることは K\”ahler 幾何の基本的な問題である. 中でも K\”ahler-Einstein 計量はそのような計量として古くより研究されてきた. Aubin, Yau による Calabi 予想の解決によれば Einstein 定数が負, または 0 の場合にはこれは必ず存在する. 他方, Einstein 定数が正の場合, つまり Fano 多様体上の K\”ahler-Einstein 計量は松島の障害や二木不変量があるため常に存在するとは限らない. そこでこれらの障害によって存在が妨げられないような一般化を考える. そのようなものは幾つか提案されているが, 今回は Calabi による端的 K\”ahler 計量と満渕による K\”ahler-Einstein 計量を採る. Calabi の端的計量はいわゆる Calabi 汎関数 (これは藤木-Donaldson の無限次元運動量写像のノルムの2乗として解釈できる) の臨界点として定義されるもので, K\”ahler-Einstein 計量やスカラー曲率一定 K\”ahler 計量を含む最も一般的な標準計量としてこれまで広く研究されてきた. 特にその存在問題は Yau-Tian-Donaldson 予想と呼ばれ, 現在の K\”ahler 幾何の中心的な話題である. 一方, 満渕の K\”ahler-Einstein 計量は近年, Donaldson の (新しい) 無限次元運動量写像のノルムの2乗という Calabi 型汎関数の臨界点として特徴づけられることが証明され注目を集めている. 本講演の主題はまるで双子のようなこれらの間の関係についてである. そもそもこれら二つの計量は本当に違うものなのか, また違うものだとして, 一方の存在はもう一方のそれを導くのか. 偏極トーリック多様体における Yau-Tian-Donaldson 対応を経由することでこれらの問に解答を与える. 時間が許せば新田氏と講演者による偏極トーリック多様体における YTD 対応の証明も紹介する.