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埼玉大学幾何セミナー

2025年5月19日(月) 17:00 ~ 18:00

1細胞データの最適輸送

講演者

井元 佑介氏(京都大学)

会場

埼玉大学 理学部1号館3階 基礎数理演習室

アブストラクト

「私たちはヒトを生物学的に理解できるか?」――この根源的問いに対し、京都大学ヒト生物学高等研究拠点(WPI‑ASHBi)は、生物学と数理科学、人文学を融合する学際的アプローチで解決に挑んでいる。本講演では、その挑戦を支える計算枠組みとして、ASHBi応用数学グループが実施している1細胞データに対する最適輸送理論の応用研究を紹介する。1細胞データとは、個々の細胞の遺伝子発現やクロマチン状態などを網羅的に計測した超高次元行列データであり、細胞集団内の多様性を定量的に把握できる点が特徴である。

第一部では、細胞状態を混合ガウス分布として近似し、分布間の最適輸送写像を推定することで細胞分化の連続ダイナミクスを解析する手法を紹介する[Yachimura et al. BMC Bioinformatics, 2024]。この枠組みにより、時空間的に離散的に得られた1細胞データから細胞系譜のダイナミクスと分岐構造を高精度に復元できることを示す。第二部では、種をまたいだ遺伝子の対応付けを目的とし、Gromov–Wasserstein最適輸送を用いて異種間の細胞集団を直接比較、解析する研究を報告する[Tokuta et al. in preparation]。マウスとヒトを含む霊長類の1細胞データを例に、保存的および種特異的な遺伝子構造の抽出と、その生物学的解釈について議論する。

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